【書評】「イエスの生涯」「ミヒャエル・コールハースの運命」の感想
▼「イエスの生涯」遠藤周作
おすすめ度:★★★★☆
遠藤周作のキリストに対する考察、といった感じの内容。
有名な作品の「沈黙」の思想がそのまま出ていて、「沈黙」を違った角度から要約した作品と言ってもいいのでは。
個人的に宗教系の本が好きというのもあって、結構楽しめました。
(ちなみに僕は無宗教ですが、世界観みたいのが好きです。)
民衆は現実に起こる奇跡、つまり現実に関係することにしか熱中しないという場面がいい。
耐え難い苦痛を経験することで、弱者の側に立とうとしたイエスの姿、罰することだけが神だったところから、愛を語ることを中心に据えたイエスの姿。
なんか病気とか不幸になる人は「神の罰がくだった」という考えが当時あったらしく、弱者ならではのどうしようもない状態に救いの手を差し出そうとした、という考え方には何か漫画の「囚人リク」を思い出してしまった。
▼「ミヒャエル・コールハースの運命」クライスト
おすすめ度:★☆☆☆☆
何かカフカが「審判」を書く際にかなり影響された小説らしい。
たしかに内容は、正義感が強すぎるがゆえに、妻すらも失ってしまったコールハースが怒りの復讐に燃えるがそのまま処刑されてしまうという、どこかカフカに通じるものは感じられる。
またどこか僕の好きな「ヨブ記」にも通じるものがあって興味深い。
ただし、1800年代の小説のため、描写がおそろしくたんたんとしており、どうもつかみづらい。
というかたんたんとしすぎて、気づいたら妻が死んでいた笑。
カフカはこのたんたんとした様まで影響を受けたのでは?と思うとなかなか面白い。
しかし、まぁやっぱり今読んで面白いと思える小説かというと、このたんたんさは致命的。
ゆえにおすすめはできません。