【書評】「熊の場所」「黒猫・アッシャー家の崩壊」の感想
▼「熊の場所」舞城王太郎
熊の場所【電子書籍】[ 舞城王太郎 ]
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おすすめ度:★☆☆☆☆
「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」の三篇が入った短編集。
まず「熊の場所」と「バット男」。
この特殊な文体が持ち味だとは思うが、この文体でしか書き得ない世界観だとはどうしても思えない。
簡単に言えば見かけ倒しな側面が大きい。
「バット男」に関してはこの文体で猥雑感を出そうとしているとすれば効果が出ていると感じたが、作者の「神様論」ははっきり言って語りすぎで作品が台無しになっている。
またよくわからないようなことを書いているようで、狙いが透けて見えすぎていて、物語性も特別あるわけではないので、面白くない。
何よりも作品の主題が「本当に作者が書きたかったものなの?」という疑問が残る。とってつけたような借り物の感じ。
両方とも失敗作だろう。
推理作家協会賞の候補になったらしい「ピコーン!」も同様。
こういう文体は一見書くのが難しそうに見えて正直簡単。志賀直哉のように、無駄を省いて書くことの方がよっぽど難しい。
書いてある内容は色々あるようで実はなにもない。
恋人を失った喪失感をこのような形で長々と書いても、それは2~3行の文章で表せることをぐだぐだ書いたようにしか感じない。
▼「黒猫・アッシャー家の崩壊」ポー
黒猫・アッシャー家の崩壊ーポー短編集I ゴシック編ー(新潮文庫)【電子書籍】[ エドガー・アラン・ポー ]
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おすすめ度:★★★☆☆
エドガー・アラン・ポーの短編集。
全体的にダークな雰囲気なものが多い。
で、やっぱりよかったのは表題作の「黒猫」「アッシャー家の崩壊」、あと「ウィリアム・ウィルソン」。
中でも「アッシャー家の崩壊」が全体的な雰囲気の構成からいっても一番良くできていると思う。面白い、というより世界観に飲み込まれる感じ。
「黒猫」と「ウィリアム・ウィルソン」は、面白いんだけど、どこか物足りない感じがする。
で、この物足りなさって言うのは作品が悪いから、というよりかは後世の作家たちが模倣してきた結果、大元のこれらの作品がやや陳腐に見えてしまうのだと思う。
そういう意味でおすすめ度星3つですが、偉大な作家だし、偉大な作品。
まぁそんくらい他人に影響を与えるくらい豊富な源泉のある作品たちなのは、もう間違いない。
多分カフカとかくらい重要な人物だと思う。
しかし、「アッシャー家の崩壊」は時が経ってもそこまで陳腐さを感じさせない魅力に溢れている。
特異な才能ですよね、こういうのって。