【書評】「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」「幸福の探求」の感想
▼「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」太田紫織
櫻子さんの足下には死体が埋まっている [ 太田紫織 ]
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おすすめ度:★★★☆☆
気楽に読めるライトミステリー。
濃厚なミステリーが好きな人には向かない小説。そもそも想定している読者層がそういう人たちではないため、それは致し方がないことだと思う。
内容としては美人な櫻子さんは「骨」が好きで、それが高じて検察みたいなこともできて、事件解決に一役かう、そして主人公の男の子はホームズにくっついているワトソンみたいな立ち位置。
ライトだからといって人が死んでいるのにそこまで驚かない登場人物の冷静さにはさすがに戸惑う。コナンか。
しかし、それに目をつむれば破綻のないエンタメ小説で、櫻子さんのキャラもいい味を出していて、まとまった小説だと思う。
ただし、3つの連作短編という形式だからということもあるが、どうしても浅い印象は受けてしまうのが欠点か。
キャラクター小説であることを考えればよく書けているけど、ミステリーとして読むには浅すぎる、といった感じですかね。
ところどころ北海道の描写がでてくるのは、作者が北海道出身だからか。
こういうところも作品に奥行きが出ていいと思った。
▼「幸福の探求」サミュエル・ジョンソン
幸福の探求 アビシニアの王子ラセラスの物語 (岩波文庫) [ サミュエル・ジョンソン ]
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おすすめ度:★★★★☆
まずタイトルで惹かれた人は読むべきだと思う。
タイトルで惹かれた人には期待通りの内容な小説。
逆にこのタイトルで惹かれない人にとっては大して物語性はない小説なので読む必要はないと最初に言っておきます。
内容としては、幸いの谷という何の不自由もない暮らしのできる国にいる王子が、それじゃつまらん!と言って、「幸福を探求」するために旅に出るお話。
色んな人に出会いながら幸福とはなんだろうということを模索していくところは個人的にすごく面白いが、物語性はなく、そういう対話がメインの小説なので、退屈だと思う人には退屈な小説だとは思うが、
「現在の価値は過去と対比することでわかる」
「幸福が不幸のもと」
などの言葉は結構刺さるものがあって、面白い。
ちなみにこの幸福探求の旅の結論としては、「幸福なんて探求しても意味がない、今を生きよう」という答えに落ち着く。
「私には人生の選択がさほど重大事とは思えなくなった」という言葉は旅の終わりにふさわしい言葉だった。