【書評】中二病の人必見→「僕は模造人間」「伊豆の踊り子」の感想
▼「僕は模造人間」島田雅彦
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これは面白い。
いわゆる中二病を扱った、自意識の非常に高い青年を扱った小説。
冒頭からかなり引き込まれた。
ただし、惜しいと思ったのが内容に対して中盤が冗長すぎること。
全体で190ページくらいの小説だけど、もっと短くした方が間違いなくよかった。
「これからは平凡に生きるから許して」
「ふと自分がただの人間であることに気づいたに違いない」
「右足冥土にひっかけて、左足でこの世をまさぐって、おかしなものになっちゃった、夢と現の連結器、一体お前はなんなのさ」
などの言葉は刺さる。
刺さる小説だっただけあって、中盤の冗長さが本当に、惜しい。そのせいで作品のバランスが悪くなってしまった。
わからないけどだから芥川賞の候補になりながら落ちたんじゃないだろうか。
この小説を「中二病必見!」みたいな感じ宣伝して売り出せば今の時代売れるんじゃないか?と思う。
20代になっても少し中二病が抜けない人は読むべき作品。
島田雅彦の作品は初めて読んだけど他のも読みたくなった。
▼「伊豆の踊り子」川端康成
【中古】伊豆の踊り子・温泉宿 他四篇 緑81-1 / 川端康成 作 / 岩波文庫
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ノーベル文学賞受賞作家である川端康成。
お恥ずかしながら「雪国」しか読んだことがない。もっと読まなきゃ……と思って手に取ったのが有名な「伊豆の踊り子」。
「伊豆の踊り子」は読んでもあまりなにも感じなかったけど、収録されている「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」は、よかった。
「温泉宿」については娼婦的な女性イメージがなまめかしくて良く、小説を書くアイディア的なものをいただいてしまった。
こういう何かに触発されてアイディアがわくという経験は読書ですごく重要。
また「抒情歌」「禽獣」には死のイメージから「むなしさ」みたいなものを感じた。読み方が合っているかわからないけど。
特に「禽獣」が僕自身、動物が好きなこともあり、なおさら感じることがあった。
両方ともうすらぼんやりと、「むなしさ」が覆い被さっているような短編。
どこかで川端康成が「私の作品はむなしさを扱っているわけではない」と言っていた。
たしかに西洋的なむなしさではない。
ぼんやりとした、むなしさという言葉でいいのかわからないが「独特のうっすらとしたむなしさ」が作品に漂っている。