僕の頭の中の悪霊~作家志望の雑記ブログ~

小説家になりたい人の書評メインのブログ。小説の創作論や、漫画アニメのサブカル、箱根駅伝のことなども語ります。

【ノーベル文学賞】好きな作家、大江健三郎さんについて書いてみた

どうも管理人です。

僕は尊敬する作家として第一に大江健三郎さんをあげています。

ノーベル文学賞という国際的な地位も得ている小説家なのですが、それによる嫉妬?みたいな気持ちからかネット上では結構悪評も多いです。

そんな大江健三郎さんについて、この僕が恐れ多いのですが書いてみました。

 

▼まず好みが分かれる文体が問題。
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大江健三郎さんを語るうえでまずあの独特な文体について書きたいと思います。

なんというか文章を読んだだけで、あ、これ大江さんの文章だ!と一発でわかるくらい特徴的な文章をしています。

夜明けまえの暗闇に眼ざめながら、熱い「期待」の感覚をもとめて、辛い夢の気分の残っている意識を手さぐりする。内臓を燃えあがらせて嚥下されるウイスキーの存在感のように、熱い「期待」の感覚が確実に体の内奥に回復してきているのを、おちつかぬ気持ちで望んでいる手さぐりは、いつまでもむなしいままだ。

例えばこれが有名な万延元年のフットボールの冒頭です。結構観念的な冒頭なので文学を読み慣れていない人にはちょっと理解が難しいかもしれません。

初期~中期の大江さんは、非常に比喩表現が多く、また言葉の選び方が翻訳小説のような感じなのが特徴的だと思います。

もっといえば修飾語が非常に多いため、どこか詩的な印象を受けます。そして一人称は決まって「僕」。僕も一人称が「僕」ですが、これは大江さんから影響を受けています。

当時の文学少年はこのどこか魅力的な言葉の選び方に憧れて、大江さんっぽい文体の人が量産されていたそうです。初期の中上健次とか完全に大江さんの影響を受けてますね。

まぁ、その後中上健次は自分の文体を獲得していくんですが、異常に読みづらくなっていきました。

とにかくこの魅力的とも言える一方、正直クセのある文体を敬遠して嫌っている人も多いようです。

たしかに修飾語が多すぎて、日本語として崩壊している文章があるのも事実です。

大江さんの文章で伝えようとしている気持ちの力が強すぎるのが要因だと思うんですが、時に読みづらいのは仕方ないと割りきった方がいいです。

個人的には大江さんの文章はじっくり頭で考えて読むのではなく、雰囲気を感じるつもりで読んだ方がいいです。

意外とじっくり読むよりも意味がとらえられて面白いですよ。

 

▼とにかく文学的な挑戦がすごい。僕という視点。

大江さんって一言でいえば、くだらない小説は書かないんです。

 ひとつひとつの作品で何かしらしっかりテーマを持って何かしら挑戦をしている。

それぞれの作品のスケールが非常に大きいです。

「個人的な体験」とか「新しい人よめざめよ」なんかは、本当に個人的な枠組みでの話なんですが、個人を扱った小説とは思えないくらいスケールが大きいものに仕上がっている。

大江さんの小説は基本的に「僕」が主人公で「僕」視点で動いています。

小説は一人称だと個人の視点にどうしてもなってしまうので、世界観が狭くなってしまいがちなのですが、大江さんの小説はそれを感じさせません。

たとえば村上春樹さんは「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」で人称を「僕」と「私」に分けました。おそらく今までの「僕」で書く小説に限界を感じての結果だと思うのですが、大江さんは頑なに僕ですね。

「燃え上がる緑の木」で両性具有の人を主人公にして視点に広がりをもたせようとした時がありましたが、基本的に「僕」です。

「僕」の視点でほとんどの小説を書いているのにこれだけ毎回違う小説を書いていたのはひとえに超勉強家だからです。もっといえば文学しか頭にない度の過ぎた文学オタクだったから。

とにかく他の文学作品から学ぶその摂取量がとてつもないんですね。

だからどんどんどんどん新しいもの取り入れていって、小説世界を拡大していく。

裏の情報の量が超膨大なんです。

 

▼ということでおすすめ小説をいくつかあげる。

あーだこーだ言っても百聞は一見にしかず。

とりあえずおすすめ大江作品をピックアップしました。

 

  • 芽むしり仔撃ち

→初期の作品。比較的読みやすく最初に読んでもらいたい。大江さんの文体をこの作品で感じてほしい。

 

  • 個人的な体験

→個人的に一番おすすめ。一人称の「僕」を、3人称の「鳥(バード)」にして、客観的な視点にしようとしている。大江さんの息子さんがモデルになっている半私小説。ちなみに僕はこれを読んで人生が変わった。

 

→やや難解だが、ノーベル文学賞を受賞するきっかけとなった代表作。表現の豊かさが半端ない。一人称小説でここまで世界観を広げられるという良い例。超名作。

 

  • 叫び声

→初期の大江さんの作品。知名度はあまりないが、良作。かなり読みやすい部類なので他の作品で挫折したらぜひ読んでほしい。子供から大人に成長することを描いている。

 

  • 宙返り

→後期の作品。もしかすると初期作品より読みやすいかもしれない。求道的な作品で文学に特別な興味がない人でも内容的に楽しめるかもしれない。僕は宗教をテーマにした作品が好きなので、結構おすすめ。

 

5つあげさせてもらいました。

是非このへんの作品から大江さんの良さを感じていただけると幸いです。