僕の頭の中の悪霊~作家志望の雑記ブログ~

小説家になりたい人の書評メインのブログ。小説の創作論や、漫画アニメのサブカル、箱根駅伝のことなども語ります。

登場人物論③~登場人物はみんな生きている~

▼小説の登場人物はみんな生きている。

小説の登場人物は虚構の存在であり、この世界には実際には存在しない人物です。

しかしながら小説を書く人は登場人物をただの虚構の存在としては扱ってはいけないと考えます。

現実世界には「物語から始まる物語はありません」。「人がいるから物語が始まる」のです。この考え方がわかれば、けっして登場人物をただただ、物語を演じるためだけの人形という扱いにしてはいけないということがわかると思います。

 

▼登場人物の扱い方の注意点を4つあげる。

①物語の都合で登場人物を利用しない。

登場人物はみんな生きている、という考えのもとで創作するのですから、当然物語の都合だけで彼らを殺したり、辛い思いをさせたりすることはいけません。

 

②登場人物は未来を知らない。

登場人物は我々と同じように生きている中で、当然、未来に一体何が起こるかなんて何も知りません。作者である我々は未来を知っているかもしれませんが、彼らはそれを知らないのです。

我々と同じように今だけの世界を一生懸命生きています。

 

③過去の不幸のみを糧に生きているわけではない。

小説世界ではよく過去のトラウマにとらわれた登場人物が度々現れます。

しかし現実に生きている我々がそうであるように、過去の不幸のみを糧に人間は生きているわけではありません。

たとえば、仕事に多少なりともやりがいを感じているとか、趣味を楽しむことを糧にしているとか、普通は色々な糧があるはずです。

登場人物たちも生きている限り、そういった不幸以外の糧が必ずあります。

作者は彼らにそれを当てはめてあげる必要があります。

 

④登場人物だって喜怒哀楽がある。

小説世界の登場人物は得てして苦悩を考えるとことに必死になる傾向があります。

しかし現実世界の人間がそんなずっと眉間にしわを寄せて悩んでいるわけではありません。

時には笑ったり喜んだりもしているはずです。

小説世界の人物は喜怒哀楽の「怒哀」だけに一生懸命です。

果たしてそれが生きている人間と言えるでしょうか。

作者は登場人物たちを楽しませたり、喜ばせたりする責任もあると思います。

 

さて、以上①~④をあげましたが、これらを少し意識すれば、小説的なお約束にとらわれない本当に生きている登場人物が作れるはずです。

作者の語りたいことだけを語らせる人形ではない、その意識をもって登場人物を扱うことが大切です。

 

▼登場人物は生きているのだから、様々な性格が内在している。

登場人物の性格を決定する時に、たとえば「人に何を頼まれても断れない弱気だけど優しい性格」という設定にするとします。

この人物はこの設定を見るだけで何となくですが、会社内で色々頼まれ事をするシーンなんかが勝手に思い浮かびますよね。

しかしこの人物は果たして家に帰った時や、仲の良い友人の前でも設定した性格のような行動をするのでしょうか?

もちろんそういう人もいるのかもしれませんが、多くの人が場面が違えば立ち回りも違ってきますよね?

もしかするとこの人物は、家庭内では亭主関白なのかもしれないし、友人の前では何を言われても断るような人なのかもしれない。現実世界ではいわゆる外面と実際の性格が違う人は珍しくありません。

つまりベースとなる性格として「弱気だけど優しい性格」という設定をするにしても、場面や環境が違えば、違う行動もこの人物はする、そう作者がとらえることによってこの人物は小説を通じて生き生きしてくると思います。

 

▼登場人物の魅力をとらえる。

さてもっと深く登場人物について考えます。

「弱気だけど優しい性格」という人物ですが、この設定でいけばこの人物の良い所は「優しい」ところになるわけですよね?

でも現実世界ではそうやって単純にその人の魅力が決定するものでしょうか?

たとえば長年付き合っている友人がいるとします。きっとその友人の魅力は初見できづいたものではありませんよね?

お互い長い間一緒にいたことによって気がついた、なかなか初見だけでは発見できない人間的な魅力に気づいたからこそ長年友人をやっているはずです。

それが本質的なその人物の魅力だと思います。

「優しい」だけの評価では、それは単なる噂話程度の評価にしかすぎません。

だから作者もその人物の本当の魅力を知るために徹底的にその人物を観察してみる。

朝起きてから夜寝るまでの一日をこの人物はどうやって過ごすのか、できるだけ細かくじっと観察し続ける。

そうやって得た情報は必ずしも小説の中ですべて使うわけではありませんが、登場人物を生きた人間として表現する、強力なバックボーンとして必ずやるべき内容だと思います。

少なくとも簡単に一元的に性格を決めるよりは、新しい切り口で登場人物を描けるはずです。

 

登場するすべての人物が本当に生きた声を出す小説になれば、よりストーリーにのめり込める、すばらしい作品が完成します。