僕の頭の中の悪霊~作家志望の雑記ブログ~

小説家になりたい人の書評メインのブログ。小説の創作論や、漫画アニメのサブカル、箱根駅伝のことなども語ります。

登場人物論①~主人公について、どんな人物であるべきか~

▼主人公はどんな人物にするべきなのか。


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小説を書く上で一番重要と言っていい登場人物はやはり主人公です。

一人称での小説では特に読者の分身ともなる人物といっても過言ではないので、作品の面白さを左右する要素だと言っても大袈裟ではありません。

主人公が魅力的であるからこそ、ストーリーの次に起きる展開が気になり、最後まで飽きずに読み進められる原動力になるのです。

そのため、主人公に魅力があるという要素は必須だと言えるでしょう。

 

それでは主人公はどのような人物であるべきなのでしょうか。

 

▼主人公に必要な5つの資質。

『ベストセラー小説の書き方』という創作論には主人公には5つの資質が必要だと書いてあります。

 

  1. 高潔さ
  2. 有能さ
  3. 勇気
  4. 好感
  5. 不完全さ
この5つであると説いています。
ひとつずつ解説していきます。
 
①高潔さ
主人公は基本的にどんな場面にあっても、善や正義の側に立っていなければならないという意味での高潔さです。
たとえばお酒が大好きだとか、ヘビースモーカーであるとか、女癖が悪いとか、そういう意味での悪ではありません。
もっと大きな枠組みから見ての悪です。殺人をしたり、法や道徳に背く行動をしない人物、それが主人公に求められる高潔さなのです。
例をあげるとルパン3世は大泥棒でイメージ的には悪い人ですが、決して殺人などの行動はしません。だからこそこれほどまでに大泥棒でありながら、好かれるキャラクターになっているのでしょう。
もし、ストーリー上で主人公が大きな困難に苛まれ、大ピンチ!という状況で、主人公が味方を犠牲にして自分だけが助かる道を仮に選んだとしたらどうでしょうか?
そんな主人公誰も応援なんてしませんよね。
仮にどうしても味方を犠牲にせねばならない場面になった時でも、味方を犠牲にしたことに大きく傷つく主人公でなければなりません。
人気漫画のワンピースのルフィはそういう意味では非常に高潔な人物ですね。
少しとぼけた所はあるけれど、仲間のためには自分の犠牲を辞さないし、海賊でありながら殺人行為などの本当の悪事は一切行いません。
 
この高潔さですが、もちろん例外はあります。
主人公が徹底的に悪の人物であっても成功している作品はたしかにあります。
しかし、そのような作品は非常に稀であり、逆に言えばよっぽど優れた作品でなければ、悪の人物を主人公に添えるのは難しいと言えるでしょう。
 
②有能さ
この有能さというのは、馬鹿な主人公はダメだ、という意味ではありません。
むしろ良い意味での馬鹿な主人公は少年漫画にたくさん存在しますよね。
スラムダンク桜木花道も馬鹿、ワンピースのルフィも馬鹿、ハンターハンターのゴンも馬鹿、ドラゴンボールの悟空だって馬鹿。
頭の良さだけで言えばみんな馬鹿です。
ここでいう有能さというのは、困難な状況になっても、何とかしようとあがき、問題を解決しようと立ち向かう能力のことです。
そういう意味では先に挙げた主人公たちは全員有能です。
もし仮に、桜木花道が海南戦で負けた後、ずっとうじうじとしていたらどうでしょうか?読者は読んでいても面白くないですよね。
桜木花道は自慢のリーゼントをばっさりと切ってボーズ頭で気合を入れてくるからこそ、読者は興奮するし、応援したくなるし、話の続きが気になるのです。
つまりここで言う有能さは人間として尊敬ができる、という意味での有能さです。
 
③勇気
有能さと少し似ている部分がありますが、問題から逃げ出さない行動をとる人物こそが勇気のある人物です。
ただし勇気と言っても色々な形の勇気があります。
たとえば、映画「アルマゲドン」の最後に父親が娘の恋人を助けるために、自分を犠牲にするシーン。あれは自分の命をかけて他人を助けるのですから相当な勇気がないと普通であれば怖くてできません。あの勇気に多くの人々は感動するし、魅力的な主人公であったと感じるわけです。
様々な困難から平気で逃げ出すような主人公を誰も魅力的には思いません。
私小説的な小説では勇気のない主人公は存在するかもしれませんが、その分心理描写はしっかりと書かなければならないし、多くの場合は最後には勇気のなかった主人公が、ストーリーの過程で成長し、勇気を出して問題に立ち向かいます。
最初から最後まで勇気のない意気地なしが主人公の物語を読んでくれる人なんてまずいないと考えた方がいいでしょう。
 
④好感
ここまでで、高潔さ、有能さ、勇気の3つの要素をあげましたが、仮にこの3つの要素すべてが完璧であったとしても、性格が鼻もちならない気取った人物であったら問題です。
いわゆるナルシスト的な性格な主人公であれば、一気にその好感度は下がるでしょう。
たとえば桜木花道のようにユーモアを利かせた感じの「天才ですから!」のような雰囲気であれば問題ありませんが、真剣に自分を優れた人物だと思っている主人公は少し問題です。
有名漫画の主人公でも本当の意味でナルシストな主人公なんて存在しませんよね。
 
では、例えば謙虚であれば好感が得られるか、と言えば必ずしもそうではありません。
謙虚すぎる人物は好感を得れるというよりは、周囲から見ればあまりに卑屈な人物に映ってしまいます。
現実世界でも好感の持てる人物は謙虚であったり、親切であったりしても行き過ぎている人はいないですからね。
 
⑤不完全さ
最後に求められる要素としては不完全さです。
今までの要素を否定するような要素になりますが、現実の世界でも一見完璧そうに見える人物であっても必ず何らの不完全な要素があります。すべてが完璧な人間なんてどこにもいないのです。
だからこそ読者は主人公の不完全な要素を見て、共感することができるし、同情もするのです。
つまりこの不完全さがあるからこそ、小説の主人公をより生き生きと、まるで現実世界に存在しているかのように書ける、大事な要素と言えるでしょう。