僕の頭の中の悪霊~作家志望の雑記ブログ~

小説家になりたい人の書評メインのブログ。小説の創作論や、漫画アニメのサブカル、箱根駅伝のことなども語ります。

非現実の王国で 世界で一番長い小説から見る創作するということについて

どうも管理人です。

読書家なら世界で一番長い小説ってなにか知ってますよね?

え?「失われた時を求めて」?全然違います。

 

世界で一番長い小説は、

ヘンリーダーガーの「非現実の王国で」です。

そして正式なタイトル名は『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』なのでタイトルすらも非常に長い小説です。

 

▼どんな小説なの?

 『グランデリニア』とよばれる、子供奴隷制を持つ軍事国家と、『アビエニア』とよばれるカトリック国家との戦争を描き、1万5,145ページに及ぶ物語である。
アビエニアを率いる7人の少女戦士、ヴィヴィアン姉妹が主人公である。彼女達は何度も敵に捕まるが勇気と機転で抜け出し最後には勝利する。また、ダーガー自身がアビエニア軍の将軍などとして登場している。

wikiより

 意外とファンタジーな内容のこの小説は、作者が19歳の頃からずっと書き続けてその期間なんと約60年にもおよぶそうです。

7人の少女戦士、という設定がまたなんとも言えませんが、長い期間書き続けられたこの小説はおそらくこの作者そのものといってもよく、まさに自分の妄想の限りを尽くした物語といえるでしょう。

 

でね、僕この作者にちょっと同調する部分があります。

 

akuryou.hatenablog.com

 僕が一番最初に書いた記事でも少し触れましたが、僕の頭の中にはずっと前から物語の登場人物がいるんです。この作者も実際そうだったんじゃないでしょうか?

ずっと自分の頭の中にある物語・登場人物をなんとか形にしたい、その一心で特に発表するつもりもなく、延々と書き続けていたのではないでしょうか?

ただただ自分の頭の中の悪霊を表現するだけのために。

 

▼どんな作者だったの?

作者のヘンリー・ダーガーはかなり孤独な人間だったようです。

というのも母親とは死別、父親は足が不自由で救貧院に入り、本人はそのため施設で生活をしていたようです。しかし周囲の同い年の子供たちともコミュニケーションがうまくとれず、孤立。

そして作者が15歳の時、とうとう唯一の肉親の父親すら亡くなってしまったのです。

ひとりになったヘンリーは施設を脱走、病院の掃除員をしながら一人で生活をはじめ、

この「非現実の王国で」を執筆し始めたのです。

 

僕は何となくわかるのですが、きっと作者には本当に登場人物が見えていて、登場人物しか心のよりどころがなかったのではないでしょうか?

おそろしく長大な小説を書くことこそが、自分の唯一の『友人』、あるいは『恋人』である登場人物をこの世界に存在させる、たったひとつの手段だったのではないでしょうか?

挿絵まで書いているのがその証拠でしょう。

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これがヘンリーの書いた挿絵。

芸術的な味こそあるものの、正直あまりうまくはないと思います。

けれど彼は文章だけでは自分の本当に生きるべき世界を表現できないと悟って、挿絵をつけたに違いありません。

以前の記事に僕もこんな記事をのせましたが、

 

akuryou.hatenablog.com

 僕も絵がないと本当に存在させることができない!と悟って絵を書き始めたという経緯があります。ヘンリーも同じ考えにいたったとしか思えません。

彼の孤独が生んだばかでかい妄想の世界を表現するためだけに。

 

▼作者と僕の違い

僕は幸いなことに結婚もしているし、周囲の人にもまぁまぁ恵まれています。

しかし作者にはそれがなかった。だからこその不幸であるし、しかし作品を書くうえの執念という意味ではそれがプラスに働いたのだと思います。

だって僕にはまだ現実の世界があるけど、彼にはその現実の世界がなくて、妄想の世界で生きるしかできなかったから。

でも僕も一歩間違えればヘンリーダーガーになっていたと思います。

それは芸術家的な良さの意味ではなく、孤独で自分の世界に閉じこもるだけの人間という意味で。

 

▼しかし僕はこの作家に勇気づけられる

こんなにも『自分のためだけに作品を書いた』作家はいないでしょう。

むしろこんなにも自分のためだけに作品を書いていいんだと思うと、目から鱗です。

何もかもをすべてこの小説に閉じ込めて書いたその姿勢を僕は見習うべきなのかもしれません。